3月17日(木)晴れ後くもり

 昨晩の大きな地震には驚かされました。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 暖かい春の陽射しの下で、令和3年度松戸市立常盤平第一小学校第62回卒業証書授与式が挙行されました。卒業生26名全員の晴れの門出を保護者(1家庭2名まで)の皆様とともに祝うことができました。コロナ禍で制約や制限の多い式の進行でしたが、卒業生は堂々と振る舞い、証書授与や卒業の言葉に代わる合奏などを練習の成果を遺憾なく発揮して立派にやり遂げました。それぞれの未来に幸あれ…。

   

  

  

 

 隣接の「ホットステーション」の先生方からのお祝いも…

 ご卒業おめでとうございます。

 私は、次のような式辞を述べました。

 ひと時より日脚が伸び、校庭の桜のつぼみが膨らみ、確実な春の足音を感じる季節となりました。このよき日に、保護者の皆様にご列席を賜り、令和3年度 松戸市立常盤平第一小学校 第62回卒業証書授与式を挙行できますことを、心より厚く御礼申し上げます。卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。只今、本校での6年間の勉学の成果の結晶である、卒業証書を授与しました。

 コロナ禍で、友と語り合いたくても十分に語り合えなかった日々、中止となった楽しみにしていた林間学園など、常一小の「顔」として学校を支えたこの二年間は、制約と制限のある窮屈な、我慢と忍耐の期間でした。でも、皆さんはお家の人とともに健康管理と衛生管理に努め、我慢すべきは我慢し、守るべきことは守り、学校生活を送ってくれたので、先生方は、楽しい学校生活実現のために工夫を重ねることができました。

 1学期の、11点差の大接戦を演じた大運動会。その後、緊急事態宣言が明けた2学期の後半は思い出深い出来事の「大渋滞」でした。一番の思い出の南房総への修学旅行、きらきらしい日本画の技法を学んで見学できた日光東照宮への校外学習、法案審議の模擬体験ができた国会見学など、一気に大切な思い出を積み重ねました。また、みんなで息の合ったボディーパーカッションの演奏を市内音楽会で披露するというあまり例のない素晴らしい取り組みをしたり、高木小と陸上部の合同記録会をしたりと、これまでとは違うことにも積極的に取り組み、常一小のアットホームで強い絆の団結を示すことができました。

 その一方でコロナ禍は、皆さんにICT化、グローバル化ももたらしました。一人ひとりがタブレットを活用した学習をするようになり、「新型コロナウイルスの流行」を世界的な視野で捉えて、考え、行動する機会が毎日のようにありました。そうでなくても、スマホやタブレットを利用してコミュニケーションをとり、ゲームをする人もいますし、SDGsという言葉を聞いて、何らかの行動を起こした人もいるはずです。これらの変化は素晴らしいことですが、相手の表情や感情に気づかないでコミュニケーションをとったり、地球規模というとてつもなく広い範囲で行動することになったりするので心配になることがあります。それは、ネット上で他人のことを考えずに、相手をひどく傷つけるような書き込みをしたり、例えばコロナの感染拡大について、ネットやテレビからの情報が多すぎて、不安だけがどんどん膨らんでしまって、知らない誰かの言っていることに惑わされたりすることです。

 確かなコミュニケーションは、眼の前の相手に自分という存在を認めてもらって、しっかりと語り合うことです。新型コロナウイルス感染拡大が社会全体の動きであったとしても、自分自身に直接感染の危険がすぐに迫っているわけではありません。どんな場合でも、実在する自分と相手がいること、眼の前の確かな事実が、自分自身や自分の考えに影響を与えるものであるということを自覚してほしいです。つまり、ICT技術を活用して仮想空間に身を置こうとも、地球規模の大きくて広い視野をもって行動しようとも、足元に自分の居場所や考え方の出発点となる場所が必要となるのです。それを、私は「ふるさと」と呼びたいと思います。

大正時代の詩人の室生犀星の小景異情の詩に「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」という有名な一節があります。これは、「ふるさと」を懐かしむ代表作のように思われがちですが、実は「ふるさと」から東京に出てきた犀星が、東京で苦労の生活を送り、ふと「ふるさと」に帰ったらそこもまた住みにくいところだったというネガティブな気持ちを表現した詩です。今日のようなおめでたい席には不向きかもしれませんが、そんな沈んだ気持ちになっても「ふるさと」を思い出して詩に表現している人がいたことに注目してほしいのです。人は、どんな感情を抱いても自分の生まれ育った「ふるさと」が居場所であり、出発点だということだからです。

ICT化やグローバル化が進展する未来には、自分の居場所や出発点となる「ふるさと」が必要なのです。そう、皆さんにとっての「ふるさと」が、この常盤平の街であり、小学校生活6年間を過ごしてきた常一小であるということを、卒業を機会に、改めて心に刻んでほしいと思います。60年以上前から多くの人たちにより創りあげられた街。豊かな緑の木々に囲まれた街。日本を代表する街路が二つもある街。そして何よりも皆さんが育った街。それが「我が街 常盤平」です。その街と共に歩んできたのが「母校 常一小」です。ここが皆さんの居場所であり、皆さんの出発点であることに誇りを持ってもらいたいです。大きく発展した未来に、皆さんが仮想空間で迷うおうとも自分の知らない誰かに惑わされそうになっても、「我が街 常盤平」「母校 常一小」を思い出してみることで、自分を見失わないでいられたら素晴らしいことだと思います。「I LOVE 常盤平」「I LOVE 常一小」この言葉を一緒に持ち続けたら素敵ですね。

保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。大きなランドセルを背負って登校していた姿が、つい昨日のように、思われておいでのことと思います。手塩にかけて育ててきた我が子の、たくましく成長した姿に、感慨もひとしおのことでしょう。明るく元気に登校する姿を見送り、満足の笑顔で下校してきた我が子を迎え入れることは、保護者の皆様にとって、充実の時であったと思います。でも、晴れの日ばかりでないのが日常です。不安に駆られたり、悩みに沈んだりする我が子を見たときは、いたたまれないお気持ちになったことと思います。そんな時きっと、温かい言葉やおいしい晩御飯で、何気なく気遣い、励ましてこられたことでしょう。そんな保護者の皆様の、優しく温かい支えがあってこそ、子どもたちは自分のために、かけがえのない誰かのために、力いっぱい健康的な学校生活を送ることができたのだと思います。子どもたちを全面的に支えて下さった保護者の皆様に、改めて、感謝の気持ちを捧げたいと思います。ありがとうございました。これからも進路や、思春期なりの喜びや悩みが多々あると思います。さらに、このコロナ禍の終息が不透明という不安もあります。そんな中でも、これまで同様、温かく、そして厳しく見守っていただけるよう、お願い申し上げます。

さらに、今年度もご来賓としてご列席いただけなかった地域の皆様にも、子どもたちへの6年間の温かい見守りと、学校へのご理解とご協力に、この場を借りてお礼を述べさせていただきます。誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

さて最後になりましたが、この会が、禁止や制限の多い窮屈なものとなってしまった点について、心よりお詫び申し上げます。教職員一同は、知恵を絞り、これまでの「With Corona」における指導のノウハウを総動員して、沈黙・静粛の中でも、子どもたちや保護者の皆様、そして私たちの心が、通い合うコミュニケーションが確立する式となるよう、計画し実施しております。今日のこの姿が、子どもたちの晴れやかな門出を祝福するために、今、私たちができる全てです。

それでは、卒業生の皆さん、胸を張って、新しい世界に第一歩を踏み出してください。ご卒業、おめでとうございます。 

令和4年3月17日   松戸市立常盤平第一小学校 校長 平松 澄明