How many いい顔

 

 表題が古いですね。1980年に発表された郷ひろみのヒット曲の題名です。私自身もまだ中学生でしたから、保護者のみなさんの中には「知らない」「リアルタイムで聞いたことがない」という方が多いのではないでしょうか。この曲の詞は、様々なタイプの魅力を見せる女性に向けた「君にはいったい、どれだけ魅力的な顔があるの。僕の負けだよ」といった男性の思いを歌ったものですが、それと「まきびと」にどんな関係があるのか・・・。

 結論から先に言ってしまえば、10月は牧中でも子どもたちのたくさんの「いい顔」に接する行事が多かったので、生まれてから20数年を「昭和」とともに過ごした私は、この曲名を思い出したというわけです。

 まず、7日には「文化祭・合唱コンクール」を市民会館ホールで開催しました。特に本校の3本柱の一つでもある合唱では、どのクラスの生徒も力を尽くして歌い切った後の表情はもちろん輝いて見えましたが、それ以上にいい顔が見られたのは発表前の休憩時間です。客席のあちらこちらに生徒たちが自発的に集まって、最後の練習を行い、円陣を組んで団結の声を上げていました。誰に言われることなく、自分たちの気持ちを確かめ合い高め合う、その顔が実に輝いて見えました。私は当日のプログラムの巻頭に「表現の祭典」と題して、この行事で披露される合唱、絵画、研究発表などの全てが表現活動であるとした上で、表現とは内なる思いを外に表すことを通じて、人と人の心をつなぐ行いであるといった意味の文章を寄稿しました。生徒たちの顔がことさら輝いて見えたのは、彼ら同士の心のつながりが確かなものに感じられたがゆえでしょう。

 さて、19日には特別支援学級である6組単独の校外学習を実施しました。学級担任の提案により今年度から初めて実施する行事になります。行き先は清水公園。参加生徒5人、引率職員も校長を含めて5人。電車を乗り継いでの小さな団体旅行でしたが、結果は大成功だったと考えています。

 現地に到着して、飯盒炊さんによるカレー作り、フィールドアスレチック、二手に分かれての園内散策という日程の中で、当初は乗り気ではなかった生徒も、みんなで力を合わせて作ったカレーを頬ばり、アスレチックで思う存分に体を動かし、グループごとに選んだカフェで憩ううちに積極的になっていきます。どの場面でも生徒たちの笑顔がはじけ、心の内に協力や連帯、周囲への気遣いや感謝といった気持ちが生まれるのが看て取れます。本当にみんないい顔をしていました。1本電車を遅らせての帰りの車内では、生徒たちもさすがにぐったりしていましたが、その姿こそ行事の成功を物語るものであったと思っています。

 そして、10月の最後を飾る校外行事である東葛駅伝大会が21日に開催され、本校駅伝部が出場しました。前日に行った校内での壮行会で感じたことですが、昨年度の75校中75位という結果に選手たちの中にも期するものがあったのでしょう。体育館の壇上で全校の応援を受ける選手たちの表情は、どれも引き締まったものでした。

 大会当日、私は第1中継所とゴールで応援をしました。第1区を快調に走り切った後藤君の清々しい笑顔、第2走者の大野君が走る直前に見せた緊張の中にも頼もしさを感じさせる表情、そして最終走者の竹之内君の力走。本人としては、決して満足できる走りではなかったようでしたが、私には事を成し遂げた後の充実感や安堵感が伝わってくるいい顔に見えました。結果は74校中68位でしたが、私の中で結果は二の次です。

 冒頭の曲の歌詞を借りれば「ウーン 君にはまったく、ウーン 君ってまったく」といったところで、みんないい子どもたちです。がんばれ、牧中生!