今日から令和5年度がスタートします。みなさんの生涯で、たった1回しか経験できない中学3年と中学2年の幕開けです。修了式でも話したとおり、過ぎてしまったら取り戻すことができない、たった1回の1年間なのだから、後悔しないように、「先達」の言葉に耳を傾ける謙虚さを持ち、「今しかできないこと」に取り組んでほしいと思います。

 それぞれの学年に求められる牧中生としての在り方については、修了式で話をしたので詳しくは繰り返しませんが、3年生は進路決定を大きな目標として、牧中の模範たる最上級生のとしての役割を果たしてください。2年生は中学校生活を目一杯楽しみながら、牧中の伝統に新しい風を吹き込み、1年生に伝える役割があります。それぞれの学年にふさわしい姿を見せてもらえることを期待しています。

 さて、今日は新年度のスタートに当たって、令和5年度の牧野原中学校の教育目標についての話をします。

 今年度の学校の目標は、「たしかな学力、たくましい心と身体」です。

 まず、「たしかな学力」とは、授業を通じて得た知識や技能を活用して、考えたり、判断したり、表現したりできる力のことです。また、その力をつけるために前向きに取り組む意欲です。ポイントは、「自分で考え、判断し、表現する」という部分です。この力が、今後、みなさんが世の中を生き抜いていくときに必要となる力です。

 そして、「たくましい心と身体」です。

 「たくましい心」は、「3年生を送る会」で、私が3年生へのはなむけに贈ったレイモンド・チャンドラーの言葉のとおり、「優しさ」を前提とした「強さ」を持つ人間性のことです。チャンドラーの言葉、覚えていますか。「タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きている資格がない」でしたね。

 「たくましい身体」は、規則正しい生活習慣と運動からつくられる健康な肉体のことです。

 この二つも、「たしかな学力」同様、みなさんがこれからの生涯を生き抜くために必要となる力になります。

 つまり、牧野原中学校では、みなさんが未来を生き抜くための力を育てることを目標としているのだということです。ここの部分が重要です。

 もしかすると、みなさんの中には、牧中でやっていることが、なんの役に立つのか、本当に自分のためになるのか、疑問を感じたことがある人もいるかもしれません。それも当然のことだと思います。牧中でやっていることは未来を生き抜くための力を育てているのですから、中学校生活に一生懸命取り組んでいる人でも、その効果が実感できるのは、実際に未来を生きるとき、だからです。

 今はわからなくてもいいのです。牧中の授業や行事の効果は、後でじわじわ効いてきます。ですから、先生方という「先達」の言葉に耳を傾け、中学生の「今しかできないこと」に一生懸命になろうと何度も言うのです。

 「たしかな学力、たくましい心と身体」は「未来を生き抜く力」となることをみなさんも覚えておいてください。

 話は少し変わりますが、私は1年前、入学式のしおりに次のようなことを書きました。2年生は覚えてくれているとうれしいのですが、3年生も自分の入学式に戻ったつもりで聞いてください。

 

 みなさんは小学校の入学式を覚えているでしょうか。あの日、どんなふうに小学校までの道のりを歩いたでしょうか。おそらく、お母さんやお父さんと手をつないで、だったと思います。手をつながないまでもお母さん、お父さんに導かれての登校だったと思います。

 では、今日の中学校までの道のりはどうだったでしょうか。お母さん、お父さんとともに歩いてきたかもしれませんが、それは導かれてのことではなく、自分の意思でここまで歩いてきたのだと思います。それが小学校6年間の成長です。みなさんには、自立の芽が育ち始めているのです。

 

 小学校の6年間で芽吹いた「自立の芽」。中学に入学して、どれくらい伸ばすことができたでしょうか。この「自立の芽」を伸ばすのも、牧野原中学校の重要な使命だと思っています。

 「自立」に関連して、今年度の牧中の「めざす生徒像」は次の4点に定めました。

 (1)自ら学び、表現できる生徒

 (2)自ら考え、行動できる生徒

 (3)自らを大切にし、個性を認め合える生徒

 (4)自ら健康的な生活を築ける生徒

 

 (1)と(2)は「たしかな学力」につながる部分。

 (3)は「たくましい心」につながる部分。

 (4)は「たくましい身体」につながる部分です。

 そして、全てが「自ら」で始まっているところがポイントです。どんな力も「自分から」身につけようと思い、「自分から」発揮しようと思わなければ、役立つものにはなりません。みなさんの中に「自立する心」と「主体的に生きる力」を育てるのだ、という思いは、牧中の全ての先生方の思いであることも、覚えておいてください。

 以上、年度初めに当たって学校の教育目標について話しました。話をしっかり頭に入れられた人は、今日から先生が言うことが違って聞こえるはずだし、一層よく理解できるはずです。

 それでは、今年度1年間、「自立して未来を生き抜く力」をつけるために、朗らかに中学校生活を楽しみましょう。