時をかける

 修学旅行のスローガンは、「時をかける修学旅行~絆を深める想い出の旅~」です。

 私が、「時をかける」と聞いて思い出さずにいられないのは、「時をかける少女」です。「時をかける少女」は、昭和から平成にかけての人気作家・筒井康隆によるタイムトラベルを題材としたSF小説で、近年にいたるまで何度も映像化、舞台化された古典的名作です。

 しかし、私にとっての思い出は、この作品を原作として1983年に公開された同名の映画にあります。主題歌としてヒットしたユーミンこと松任谷由実が歌う「守ってあげたい」は、みなさんの中にも聴いたことのある人がいると思います。映画のストーリーは、主人公の女子高校生が身につけたタイムトラベル能力を通じて経験する未来からやってきた同級生との切ない恋物語で、原作よりも少しロマンチックに仕上がっていたように思います。高校生だった私は、この映画を当時好きだった女の子と二人で観に行きました。スローガンを目にして、その日の幸せな気持ちが一瞬蘇えりました。スローガンの言葉と映画とその映画を共に観た人の記憶が結びついて、私をその時代に引き戻したのです。タイムトラベルも思い出の中では 自由自在です。これこそが「時をかける」というものです。

 「時をかける修学旅行」には、奈良・京都という時代を超えた古都への旅という意味と時を超えて心に残り続ける仲間との思い出深い旅という意味の両方が込められていると思います。奈良・京都には私たちが生まれる遙か以前から今に至るまで、移り変わる歴史を見守り続けてきた文化財が多く残されています。それらはたぶん、私たちがこの世を去った後も、その場に存在し続けるでしょう。その悠久の時が感じられる土地に身を置いて歴史や文化を学ぶことは、みなさんにとってもちろん大切なことですが、それをいつ、誰と共にするのかが一層大切なポイントです。

 牧中生である今、牧中に共に学ぶ仲間との修学旅行。今しかできない旅、今だからこそできる旅です。この旅が、時を経たのちも、みなさんを瞬時に中学時代に引き戻してくれる「時をかける修学旅行」となることを祈っています。

 

※今年度の修学旅行は5月21日から2泊3日の日程で京都・奈良方面で実施します。